「その話は今日はやめておきましょう」を読みました。
井上荒野さんの著作です。
「いのうえあれの」さんと読みます。
直木賞作家 井上荒野さんの小説を読むのは初めてです。
物語は、定年後の70歳前後の夫婦が主人公です。
主人公は、今どきの若々しい老夫婦と言ってよいのではと思います。
二人の子供は独立し、二階建ての一軒家に住む夫婦です。
夫は人間ドックで生活習慣病の改善を指摘され、
夫婦でクロスバイクで運動しようと、夫婦2台の自転車を購入し
サイクリングを始めるところから物語は始まります。
サイクリング中に自転車がパンクし、自転車ショップで修理をします。
その際、青年が修理を担当しますが、その青年が後程この夫婦に深く関わることになります。
ある日、夫が買物でクロスバイクで出かけた際に転倒し足首を骨折します。
病院を退院時に慣れない松葉づえに困る夫婦に、
偶然に出会った次点者のパンクの時に世話になった自転車ショップの青年が助けてくれます。
いい青年と思った妻は、重なる偶然に家の手伝いを願い出て用事を頼みます。
最初は良かったのですが、彼が家に来た日に大切な物が紛失する事に気づきます。
疑いたくないけれどもおかしいと思う気持ちで、夫に相談せず妻は自然に振舞います。
どこにでもいる弱気な高齢者とそれを侮る若い世代の姿が、普通に描かれています。
読んでいると「そんなところあるなあ」と思わされます。
読み進めていますとハラハラするところもありますが、
エンディングの「主人公夫婦のきっちりとした姿」にホッとさせられます。
老いはストップが掛からずに進みますが、気持ちが老いたらいけません。
阿吽の呼吸もいいですが、夫婦はお互いのわだかまりに気づいたら
さりげなく話し合うことが大事だとも思いました。
著者井上荒野さんのプロフィール1961年東京生れ。成蹊大学文学部卒。1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、2008年『切羽へ』で直木賞、2011年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、2016年『赤へ』で柴田錬三郎賞、2018年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞を受賞。他の作品に『もう切るわ』『ひどい感じ 父・井上光晴』『夜を着る』『キャベツ炒めに捧ぐ』『リストランテ アモーレ』『あちらにいる鬼』『あたしたち、海へ』『そこにはいない男たちについて』『百合中毒』『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』『小説家の一日』などがある。
新潮社のページより引用
”日本のひなた”みやざき暮らしの男です。ニックネームは「ひでさん」です。このブログは2020年3月より始めました。月に2~3回の珈琲の自家焙煎と週1~2回の市民農園約9坪での野菜作りとぼちぼち嗜むソロウクレレについて書いています。防災士です。よろしくお願いします。